11月 11

さくらのクラウドの料金が発表になり、相対的に他のクラウドサービスより安いと言われています。ところが、実際にAWSなどから置き換えるような用途を考えた場合に、今までの感覚でプランを選ぼうとすると、本当に安いのか疑問になる部分が出てきたので、シミュレーションをしながら考えてみました。

バランスが悪い?CPUがネック?

アプリケーションサーバーの用途などCPUパワーが必要なケースを考えます。
例えば、4コアは欲しいけどメモリは少なくてもいい場合、4コアの最低プランであるプラン7(メモリ16GB)を選択しないといけなくなります。これはAWSでいうCPUに重みを置いたc1.mediumインスタンスのようなプランがないためで、バランスが悪くオーバースペックになってしまいますし、価格も高めになります。

しかし、パフォーマンスは使われているサーバーのスペックやリソース配分が影響を与えるので、元々の能力が違う上でコア数の多寡だけを取り上げても判断材料にはなりません。

実際多くの方が、先行サービスのさくらのVPSとAWS(EC2)のベンチマークを行なっていて、結果は概ねさくらのVPSが優れているというものです。

また、EC2で定義されているECUというCPUの単位は、以下のようなものです。

特定のインスタンスに配分されている CPU 量は、これらの EC2 Compute Unit で明示されます。当社はいくつかのベンチマークとテストを使用して、EC2 Compute Unit のパフォーマンスの安定性と予測可能性を管理します。1つの EC2 Compute Unit は、1つの 1.0-1.2 GHz 2007 Opteron または 2007 Xeon プロセッサの CPU 能力に等しい能力を提供します。

c1.mediumインスタンス(5 ECU(2.5 ECU × 2仮想コア))の場合は2007 Opteronの2.5-3.0GHz × 2仮想コア相当のパフォーマンスだということになります。

この辺りを考慮にいれて、コア数に振り回されないように、実際のアプリケーションでテストを行って最適なプランを選ぶことになりそうです。
現段階では安いとも高いとも言えないところです。

メモリ特化の用途には安い!ではディスクは?

DBサーバーやキャッシュサーバーの用途などメモリが多く必要なケースを考えます。
例えばmemcachedサーバーの用途でメモリが8GBあればCPUもディスク容量も問わないケースだと、プラン5になりAWSのm1.largeインスタンスと比べて半額で済みます。

一方、m1.largeインスタンス並のディスク容量を追加しようとすると、プラン5+750GBで26,150円と高くなります。
これはAWSのディスクが安いとも言えるので、大容量のストレージが必要な場合はさくらのクラウドは安いとは言えないでしょう。

実際、DBサーバーの用途で8GBのメモリを積んだサーバーを運用する場合、850GBものデータを扱うことはパフォーマンスを考えるとありえないので、通常のケースでは問題にならないと思っています。

トラフィック特化の用途では?

大容量コンテンツの配信やストリーミングサービスだけでなく、単純にアクセス数が多いサービスだと転送量に対する課金が全体の半分くらいに達することもあります。
さくらのクラウドは転送量やリクエスト数に応じて従量課金されることがないので、トラフィックに関しては安いと言えます。

スペック・料金シミュレータ

上記を踏まえて、スペックと料金のシミュレータを作って見ました。
利用したいスペックを選択するとマッチする最低ラインのプランが決定されます。
利用したいスペックよりも表記上オーバースペックの場合、該当のスペックが赤くなります。
(※ 料金表記などに誤りがある場合もありますのでご了承の上、ご利用下さい。)

利用したいスペック

選択されたプラン
CPU
メモリ
ディスク
月額料金
日割料金

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9月 09

このサイトは(本日現在)、Rackspace US社の「Cloud Servers」サービス上で
稼働しています。

Cloud ServersはAmazon EC2相当のサービスで、Slicehostなどを買収したRackspaceが運営するXenベースのホスティングサービスです。

EC2ではなくCloud Serversを選んだ理由を、使用感を元にレポートしたいと思います。

目次

安い(=スペックの選択肢が多い)

もうこれに尽きます。

EC2はスモールインスタンスが$0.1/時間で、これ以下のラインナップがありません。
メモリ1.7GB/ディスク160GBのスペックがオーバースペックだとしても、
選ばなければなりません。

1ヶ月(720時間換算)利用すると$72となり、サーバーの能力を生かしきれない場合どうしても割高な印象になってしまいます。

以下にEC2とCloud Serversのスペックと料金を表にまとめました。
ディスク容量やCPU数なども含め同じスペックとは言えないので
あくまで参考としてご覧ください。青文字の行がEC2の標準的なインスタンスです。

メモリ ディスク 論理CPU数 アーキテクチャ 料金/時間 備考
256MB 10GB 64bit $0.015 Cloud Servers
512MB 20GB 64bit $0.030 Cloud Servers
1GB 40GB 64bit $0.060 Cloud Servers
1.7GB 160GB 1 32bit $0.100 EC2(Small)
2GB 80GB 64bit $0.120 Cloud Servers
4GB 160GB 64bit $0.240 Cloud Servers
7.5GB 850GB 4 64bit $0.400 EC2(Large)
8GB 320GB 64bit $0.480 Cloud Servers
15GB 1690GB 8 64bit $0.800 EC2(Extra Large)
15GB 620GB 64bit $0.960 Cloud Servers

Cloud Serversは、メモリ256MB/ディスク10GBのインスタンスから用意されていて、
このミニマムのインスタンスが$0.015/時間で借りることができます。1ヶ月利用で$10.8
256MB以上のインスタンス、例えばメモリ1GB/ディスク40GBのインスタンスでも$0.06/時間。

ディスク容量がネックになる用途以外では魅力的なラインナップではないでしょうか。

特にテスト機や実験機として一時的に利用したいようなケースでは、ロースペック・ローコストはとても助かります。

自動バックアップサービスが無料

バックアップと言ってもデータ自体のバックアップではなく、LVMのスナップショットベースのバックアップになります。
ファイルを個別に取り出すことはできませんが、データを復元する上では全く問題ありません。

このスナップショットがインスタンスごとに3つまでストックできるようになっていて、Web管理ツールから日次/週次でスケジューリングすることが(しないことも)できます。

日次バックアップは「daily」、週次は「weekly」という名前が自動的につけられ、バックアップが実行される度に上書きされていきます。つまり、日次と週次の両方をセットしてもバックアップの枠が1つ余るようになっています。

実は任意のタイミング、任意の名前でもスナップショットがとれ、なおかつスナップショットから新たなインスタンスをつくる(クローンをつくる)こともできるので、EC2で言うところのAMIと同じ用途でバックアップサービスが利用できるわけです。しかも無料で!

現在はミニマムのメモリ256MBのインスタンスから、512MB、1GB、2GBまでのインスタンスがバックアップに対応していて、今後全てのインスタンスに対応する予定だそうです。
EC2と比較してディスク容量が少ないのはこういうところにあるかもしれません。

さらに、Amazon S3相当のサービスであるRackspace Cloud Filesにバックアップイメージを無料で転送できるようにもなるようです。
これが利用可能になって、Xenのゲストイメージが出し入れできるようになれば、例えば自社サーバーのXen環境をそのままクラウドに移したり、逆に戻したり、インフラに縛られることなく簡単にサービス環境を移すことができるようになりそうです。

2009/9/12 追記

重要なことを書き忘れたので追記します。
バックアップはインスタンスに結びついているものなので、インスタンスを削除すると消えてしまいます(インスタンスを停止するという操作はありません)。
つまり、EC2のようにインスタンスをイメージ化して保存することが現時点でできないため、インスタンスのクローンを作成しようとすると、インスタンスを立ち上げ続けておかなければなりません
バックアップの保存が待ち望まれます。

スケールアップ、スケールダウンが簡単

EC2で、サービス稼働中のスモールインスタンスをラージインスタンスにスケールアップさせようとしたら、別途ラージインスタンスを立ち上げて、そこに環境を乗せ変える必要があります。
稼働中のスモールインスタンスのAMIを生成して、そのAMIからラージインスタンスを立ち上げる方法ができそうですが、これはアーキテクチャ(i386/x86_64)が違うためできません。
できたとしても、どちらも別途インスタンスを用意する必要があります。

Cloud Serversのアーキテクチャは全てx86_64なので、ミニマムからマックスまで自在にリサイズ可能です。
インスタンスのリサイズはWeb管理ツール上でほぼ自動でできます。

それでもダウンタイムが発生するので、それが許容できない場合はスナップショットから別途インスタンスを立ち上げる方法もあります。ただし、EC2のElastic IP相当の機能はないので、IPアドレスが変わることを考慮する必要があります。

DNSが無料、しかも逆引きにも対応

EC2ではサポートされていないので、外部にDNSサーバーを用意する必要があります。

Cloud ServersではWeb管理ツールでDNSレコードが登録できます。
dns1.stabletransit.comとdns2.stabletransit.comをレジストラーに登録すれば、このDNSサーバーが利用できるようになりますので、別途DNSサーバーを用意する必要は(とりあえず)ありません。
ライトユーザー向けのサービスかもしれませんが、嬉しいサービスです。

それからIPアドレスからドメイン名を引く「逆引き」をした場合に返すドメイン名の変更にも対応しています。

あまり関係ないかもしれませんが、スパム対策でメールサーバーなどが逆引きをしてドメイン名を確認する場合などがありますので、そういうケースにも安心して利用できます。

その他、補足

帯域の料金

IN OUT
EC2 $0.10 $0.17
Cloud Servers $0.08 $0.22

帯域の料金は、サーバーからみてダウンロードはCloud Serverの方が安いんですが、アップロードはEC2の方が安くなっています。
EC2のように利用量によって単価がさがるプランもないので、動画配信やストリーミングなどの用途では高くつく可能性があるので注意が必要です。

回線の応答速度

気になる回線の応答速度は、同時刻にそれぞれのサーバーから日本のサーバーへpingを飛ばした平均で、EC2が193.592ms、Cloud Serverが152.008ms でした。体感としては同じで、日本からだと遅く感じるのは否めません。

セキュリティー

EC2の場合はSecurity Groupを設定することでサーバーより前でポートを閉じることができますが、Cloud Serversには用意されていません。
インスタンスがDMZに展開されますので、iptablesなどでしっかり対策する必要があります。
ちなみにCentOS5.3で起動した直後はiptablesによって22ポート以外は閉じられていました。

セキュリティーがらみで気になったのは、インスタンスのrootパスワードの発行です。
EC2ではあらかじめ用意した鍵をセキュアな通信で送信し、その鍵を使ってログインする仕様ですが、Cloud ServersではSSL通信のWeb管理ツール上にrootパスワードとIPアドレスが表示されるだけではなく、メールでも同じ内容が送られてきます。これには頭を抱えてしまいました。
自動発行されたrootパスワードはログイン後即効変更しましょう。

参考

http://www.rackspacecloud.com/cloud_hosting_products/servers/compare
http://aws.amazon.com/ec2/
http://www.rackspacecloud.com/cloud_hosting_products/servers/pricing

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9月 01

フリーランスのエンジニアとして開業いたしました。

屋号にはcloudropと名付け、インターネット全般の技術支援(ざっくり!)を提供いたします。
コアとなるサービスはWebサービス(PC/モバイル)の開発と運営で、屋号にもある「クラウド」をインフラに利用した展開を考えています。

特に、企画内容を読み解いて実際に動くサービスを作り上げるのを得意としていますので、
技術的検証(本当に動くのか)やマーケティング(本当にニーズがあるのか)の目的で試作的に行う「プロトタイプ開発」のご要望に一番お応えできます。

プロトタイプ開発には低コストで迅速な開発が求められますので、インフラにかかる初期のリソースとコストをクラウドの利用で圧縮し、開発に集中することで効率的にプロトタイプを生みだすことができると考えています。

お仕事のご依頼、お見積もり、ご相談などお気軽にお問い合わせ下さい。

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